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工事監理とは?定義や業務内容・工事管理との違い・必要資格を解説

2023年09月15日

工事監理は、建築物の安全性と品質の向上に寄与する大切な仕事です。
とはいえ、具体的な業務内容や工事管理との違いがよくわからない方もいるのではないでしょうか。

そこで、本記事では工事監理の法的な定義や業務内容、工事管理との違い、必要な資格などについて解説します。
ぜひ参考にしてください。

工事監理とは?定義や業務内容・工事管理との違い・必要資格を解説

工事監理とは?安全性と質向上に不可欠な業務

工事監理は法律で定められた資格です。
ここでは、工事監理の法的な定義や工事監理者の業務内容について解説します。 

建築士法における定義と役割

建築士法において、工事監理は以下のように定義されています。(※)

“この法律で「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書の通りに実施されているかいないかを確認することをいう。”

つまり、工事監理とは設計図と実際に行われている建築工事とを照らし合わせ、設計通りに建築されているかを確かめる行為を指します。

建築士法の定めるところにより、工事監理者は建築士が務めなければなりません。
また、一級建築士・二級建築士・木造建築士の種別により、設計・管理できる建物の用途・規模・構造が異なります。

工事監理者は一般的に、建築物の設計図を作成した設計事務所の建築士です。
自ら設計した建物に欠陥が発生するのを防ぐ、重要な役割を担います。

なお、建築基準法第5条第4項では、工事監理者を建築士から選任することは建築主(施主)の義務としています。
実際には、施工会社などが工事監理者を選定し、説明を受けた施主が承認する流れが一般的でしょう。

(※)引用元:e-GOV 法令検索「建築士法」第二条第8項

工事監理者が担う業務の種類

工事監理者が担う主な業務には以下があります。

業務

内容

工事監理方針の説明

着手に先立ち、施主に工事監理体制や方針を説明する。変更がある場合はすみやかに施主に報告する。

設計図書の内容把握

設計図の内容をチェックし、不備を発見した場合は必要に応じて施主を通じ設計者に確かめる

設計図と施工図の検討

施工業者が作成した施工図などが設計図通りになっているか検討し、施主に報告する。

工事と設計図の照合・確認・報告

工事が設計図通りか、目視や品質管理記録の確認など対象に応じた手段によって確かめる。

設計図通りでないときは、施工業者に指摘し改善を求める。

工事監理報告書などの作成・提出

確認をすべて終えたら、工事監理報告書などを作成して施主にわたす。

工事監理の方法は国土交通省が定める「工事監理ガイドライン」を基準とします。
ただし、工事はそれぞれの状況に大きな違いがあるため、個々の特性に即して合理的に判断した工事監理が求められます。

なお、工事監理者は常に現場にいるわけではなく、工事の要所で立ち会い、検査するケースが一般的です。

工事監理と工事管理は何が違う?具体的な相違点を解説

工事監理と混同されやすい工事現場の仕事として「工事管理」があります。
同じ読みですが、工事における役割や担当する業務は異なります。

主な業務は、工事スケジュールの確認や必要な職人の手配、材料の発注・管理、現場の安全確保などです。

工事管理者は現場を直接動かし管理する責任者を指す名称で、資格がなくてもなれます。
施工業者の現場代理人が務め、現場の常駐が一般的です。
ただし、外注の現場管理があちこちの現場を巡回しながら管理する場合もあり、工事によって異なります。

工事監理者になるのにどのような資格が必要?

工事監理者は、工事と設計図を照らし合わせ、必要に応じて施工業者に改善指示を出す重要な仕事です。
専門知識がなければできないため、工事監理者になるには資格が求められます。
ここでは、工事監理者になるために必要な資格や取得方法について解説します。

建築士の資格が必須

建築士法により、工事管理は建築士のみが行える独占業務であると定められています。
建築士には一級建築士・二級建築士・木造建築士の区分があり、それぞれが工事監理できる建物は以下の通りです。(※)

構造

一級建築士

一級建築士

二級建築士

一級建築士

二級建築士

木造建築士

木造

延床面積500㎡超

高さ13m超

軒の高さ9m超

延床面積500㎡以下

3階以下

延床面積300㎡以下

2階以下

鉄筋コンクリート造・鉄骨造り・石造・レンガ造りなど

延床面積300㎡超

高さ13m超

軒の高さ9m超

延床面積300㎡以下

3階以下

延床面積30㎡以下

2階以下

なお、2階以下で延床面積が100㎡以下の木造建築物などは、建築士の資格がなくても工事管理できます。

学校や病院など「特殊」に該当する場合は、上記の表と取り扱いが異なります。
また、建築する地域により、対応できる平米数も異なります。

(※)参照:国土交通省「工事監理制度の概要」工事監理について

建築士の種類と取得方法

建築士になるためには、国家試験を受けて合格後、免許登録を行う必要があります。
国家試験の受験要件は学歴のみで、合格後に実務経験の要件を満たせば免許登録できます。

以下は、一級と二級の受検資格・免許登録要件をまとめた表です。

種類

受験資格

免許登録に必要な実務経験年数

一級建築士

  • 国土交通大臣の指定する建築に関する科目を履修し卒業した方
  • 二級建築士
  • 建築設備士
  • そのほか国土交通大臣が認める方
  • 大卒:2年以上
  • 3年制短大卒:3年以上
  • 高専・2年制の短大:4年以上
  • 二級建築士・建築設備士の区分で受験:4年以上

二級建築士

  • 国土交通大臣の指定する建築に関する科目を履修し卒業した方
  • 建築整備士
  • そのほか都道府県知事が認める方
  • 建築に関する学歴がない場合は実務経験7年以上ある方
  • 大卒・団体卒・専門学校卒:不要
  • 高卒・中卒:2年

工事監理者を目指す場合、建物関係の学歴がない方でも7年間の実務経験を積んで二級建築士を受験するとよいでしょう。
二級建築士としてさらに4年の経験を積めば、一級建築士も目指せます。

まとめ

工事監理とは、設計図と実際の工事を照らし合わせ、問題がないかを確かめる重要な仕事です。
工事監理者は、不備があれば施工担当者などに改善の申し入れをするなど、図面通りに建築が進むよう尽力しなければなりません。
専門知識が必要なため、工事監理者になるためには建築士の資格が必要とされています。

建物の規模に応じ、必要な建築士資格の種類は異なります。
工事監理者を目指す場合、まずは建築士の資格取得を検討するとよいでしょう。

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